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【景気判断】『経済データの読み方』 鈴木正俊

 

経済データの読み方 新版 (岩波新書)

経済データの読み方 新版 (岩波新書)

 

 【概要】

経済再学習中の私に、どこから経済データを引っ張ってくればよいか、そのデータをどう読み解けばよいかを教えてくれる、いつでも手元において置きたい、ありがたい一冊。

【アマゾン詳細】

新しい成長のスタート台に立った日本経済は、好景気が言われる一方で格差拡大に揺れている。成長率・予算・日銀短観・株価・金利・賃金・失業率・国際収支など、主な経済指標に着目することで何が分かるのか、データはどう作成されているのかを平明に説く。旧版から二一年、データを全面的に刷新し、日本経済の全体像を提示する。 

【目次】

Ⅰ 日本経済は、いま

Ⅱ 景気の見方

Ⅲ 財政・金融

Ⅳ 国民生活

Ⅴ 物価

Ⅵ 雇用・賃金

Ⅶ 国際貿易・通貨

 

【ポイント】

◆1、統計は作るもの

日本の統計は何百、何千とあるが、多くの重要統計は主に官庁が作成している、いわゆる「官庁統計」だ。一般には、この統計は何となく正しいものだとか、あるいは中立的な存在と考えられがちだが、いろいろな問題がある。たとえば「国勢調査」について言えば、東京都心では住民が調査に協力的でないために場所によっては30%を超える未回収があるなど、統計の精度に疑問符がつけられている。 

 ◆2、政府と日銀の対立

政府と日銀の間には景気の見方についてかなりの見解の相違がある。多くの場合、日銀が楽観的であるのに対して、政府は慎重である。これには理由がある。日銀は、金融政策の担当者として金融政策に負担がかかることを避けようとするから、経済の先行きに対して楽観的な見方をとるほうが何かにつけてプラスとの判断をしがちだ。これに対して、政府は巨額の国債を発行しており、赤字削減を最優先に考える立場上、景気の先行きに対して慎重な見方にならざるをえない。政府は経済の立直しについては財政ではなく、金融政策によることが望ましいと考えるからだが、日銀は金融に過大な負担がかかることには当然ながら抵抗する。 

 ◆3、景気判断が文学的表現になるわけ

内閣府エコノミスト集団として専門的な立場から景気分析をするが、同時に行財政改革についても熱心である。

財務省は財政の担当者として一日も早く財政赤字圧縮したいと考えており、その面では無駄な支出を削減したり、増税に積極的であるが、同時に多数の政府関係機関を管轄しており、天下り先の確保の観点からは、これらを廃止したり、縮小したりすることに反対の立場に立つことが多い。

経済産業省は産業界、特に中小企業の代弁者として高い成長が望ましいと考えており、財政赤字には寛容であることが多い。 経済産業省は傘下に多くの関係機関を持っている点では財務省と同じであり、これらの機関の維持に熱心であることには変わりはない。

これらの関係各省の考えや利害の調整は簡単ではないから、内閣府の景気判断はしばしばあたり障りのない文学的表現に終始することが多い。

 ◆感想

 なんといっても各章末にまとめられた経済指標とそれぞれの発表元の記載がありがたい。

日本経済ひいては世界経済の動向を、新聞や有識者から与えられる解釈で飽き足らず、みずから調べたい人には有益この上ないでしょう。

加えて指標を読む際の留意点も記されています。「統計は作られたものである」こと、政府の公式見解であっても各省庁の立場で対立があったりだとか、ある指標は早く出るけど、実感と食い違うことが多いよとか、ある指標は詳しいんだけど3年後に出るよなど。

こうしたことは読解初心者にはわからない点ですからね。

そしてデータを読む際の著者の冷静な視点と論理の展開も魅力的です。

習い性となるといいますから、しばらくは経済データに触れるたびに読み返したいと思います。