KLZD

"The book kindled my interest."

MENU

【あえて失敗させる】『世界のエリートの「失敗力」』佐藤智恵

 

 【前フリ】

現在大失敗のさなかにいる私には、とても引きの強いタイトルだったので購入。

 

【アマゾンの紹介】

ハーバード、スタンフォードマッキンゼー、BCG、ゴールドマン・サックス、グーグル、トヨタ自動車ソニー電通三井物産三菱商事……その貴重な実話から学ぶ!「あなたは失敗から何を学びましたか?」世界最高峰の組織では、この質問への回答が、あなたを評価する重要な要素となる。今、グローバルリーダーに最も求められるのが「失敗力」だからだ。本書では、トップクラスの経営大学院の授業と、世界で活躍する12名の日本人エリートの実話から、身につけるべき「失敗力」の実情を探る。「大の大人が泣き出すほど厳しい『失敗シミュレーション』とは?」「華やかな経歴の人が、こんな挫折を乗り越えていたなんて!」……多くの驚きとともに、挑戦欲をかきたてられる内容だ。 

【目次】

第一章 ハーバードが教える失敗力

第二章 スタンフォードが教える失敗力

第三章 外資系企業の失敗力

第四章 日本企業の失敗力

第五章 失敗を恐れる前に

第六章 失敗力を鍛える

 【ポイント】

◆1 失敗体験のエッセイが有名経営大学院の重要な合否基準

 

ハーバードやスタンフォードなどの経営大学院を受験する際には、TOEFL、GMATといった点数とともに課題エッセイを提出しなければいけない。

そのエッセイのテーマはさまざまだが、「将来の目標」「仕事で達成したこと」とならんで、よく出題されるのが「失敗体験」なんだそう。

ではなぜ世界の一流経営大学院は「失敗体験」を聞くのか。

人は成功を語るときは自身たっぷりになるし、失敗を語るときは謙虚になる。どちらが深くその人のことを理解できるかというと、失敗を語るときだ。恥ずかしい体験やつらかった体験を語るとき、人格そのものがにじみ出る。

この人が世界のリーダー候補としてふさわしいか。

それを決めるのは、失敗からどう立ち直ってきたかである。p4

 

 ◆2 ハーバードはどう失敗を教えるか。

 

入学に際して「失敗体験」を語らせた経営大学院、そのなかでハーバードは入学してからも多くの失敗体験を授業の中で積ませるのだそう。

そのなかでもディスカッションの授業は、日本の討論会とは趣きを異にしているようで。

学生は、毎回、ある特定の企業事例について、「自分が経営者だったらどういう判断をするか」を考え、教授の司会に従って議論する。成績の半分は発言点。しかも、ハーバードは、毎年、成績不良で退学する人が数人いるほど、学生への評価が厳しいことで知られている。p23

2012年にハーバードビジネススクールに入学した湯浅エムレ秀和さんは、その授業を振りかって、

「クラブディスカッションは、一人対八十九人の戦いですよ。発言すると、必ず、『それは違うと思うな』と反論されますから。たまに、ボコボコにされることもあります。恥ずかしい思いをすることもありますが、これも学生に失敗を疑似体験させる教育の一環なのではと思っています」p28

 

 失敗を体験させる授業はディスカッションだけではない。

ハーバードでは、「ケース」とよばれる教材が授業で使われている。

「ケース」とは、実在する企業や経営者/役員が過去に直面した問題をストーリー形式で紹介した教材のことだ。

 

 「ケース」を元に「自分がその問題に直面した主人公の立場だったら、どうするか」を考えることになっている。

特筆すべきはこの授業が「正解の解決法」をたどりつくことを目的としていないこと。

授業で議論することによってケースの正解にたどりつくのかといえば、そうでもない。教授も、主人公が失敗した後、どうやって立ち直ったか、「その後」を伝えることはあっても、これが正しい解決法だ、とは決して言わない。ハーバードの授業では、正しい解を勉強することを目的としていないからだ。

ケースによって失敗を疑似体験し、ディスカッションによって自分なりの失敗の立ち直り方やリーダーシップを自覚していく_それがハーバード流の失敗力の鍛え方なのだ。

◆3 なぜ失敗を教えるのか?p47

 

世界最難関の経営大学院の一つ、ハーバードビジネススクールはなぜこんなに「失敗」に焦点をあてて、学生を教育しているのだろうか。

著者はその問いに3つの理由を挙げている。

①ハーバードの学生は入学する前に「失敗したことがない」。

元々優秀で、社会人経験も数年しかない人がほとんどだ。大企業でスター社員になった人たちが多く、大きな挫折を経験している人は少ない。

だから、あえて「失敗体験」を掘り起こし、失敗から学べる人か確認したうえで入学させ、授業でも失敗を山ほど疑似体験させる。

なぜならハーバードの卒業生は、早々に、グローバル企業の管理職や企業家になる人が少なくないからだ。だから早急に失敗耐性を身に付けなくてはならない。

 

②謙虚さがリーダーシップの重要な要素と位置づけているから。

成績優秀なものは、えてして傲慢になってしまうのが人の常であるし、そんな人に部下を率いることはできない。

 

③失敗からは多くをより効率よく学べるから。

人の成功体験を聞いても真似しようがない。人の失敗体験なら、共感できるし多くを学べる。

 

◆4 スタンフォードは失敗をどう教えるか。

 

ハーバードと並び立つ世界最難関のスタンフォード大学経営大学院は失敗をどう教えるか。

ところで、それぞれのビジネススクールは学生を教育するにあたって、自らに課すミッションがある。ハーバードのミッションは「世界に変化をもたらすリーダーを教育すること」である。

一方のスタンフォードのミッションは「人々の生活を変え、組織を変え、世界を変える人材を育成すること」。そのミッションを象徴するかのように、ホームページには、「コンフォートゾーンから押し出されることはプラスになる」とある。

コンフォートゾーンとは、自分が楽だと感じる領域のことである。その中にいては自分にも、組織にも変革をもたらせない。そこから飛び出す勇気を持つ人がスタンフォードでは評価される。

ではコンフォートゾーンから飛び出て挑戦することが求められるスタンフォードの学生はどのような授業を行っているか。

それは「ソフトスキル」と呼ばれるリーダーシップスキルやコミュニケーションスキルを身につけることを重視した構成となっている。

中でも特徴的なのがロールプレイ演習。

ロールプレイ演習とはその名の通り、役を演じる実習。毎回氏名された学生は、「解雇を伝えるCEO役」など、難しい経営者の役柄をクラスメートの前で演じることになる。役柄の設定は、すべて実話を元にしているそうだ。p53

 

なぜスタンフォードはこうしたロールプレイ演習を取り入れているのだろうか。

それはソフトスキルを系統だって学ぶ機会が実社会ではなかなか無いからだ。

そこで、卒業後、学生が直面することになる人間関係の修羅場に備えて、授業でソフトスキルを教えるわけだ。演習で教授は、学生が失敗するように、あえて厳しく指導する。授業で何度も失敗しておけばそれが財産となり、社会に出たときに冷静に対応できる。p54 

 

ビジネススクールというのは、どれだけ失敗しても許されるリスクフリーの環境です。例えば、スタンフォードの演習で失敗しても、『小学校のときに学級委員に立候補したけど落選してしまった』程度の失敗あのです。本人以外は覚えていないし、社会的なリスクもありません。しかし、リスクフリーの環境で失敗を重ねながら挑戦したことで、確実にメンタルは強くなったと感じています。」 

 ◆5 再起できる失敗と再起できない失敗

 失敗は2つに分けられるという。

①再起できる失敗

②再起できない失敗

 

このうち①再起できる失敗とは、つぎの二つのいずれか、あるいは両方を指す。

・最大限の努力をした結果の失敗

・周りの人に対して、最大限の誠実さを尽くした結果の失敗

 

逆に再起が難しい失敗とはつぎのような原因で失敗したケース。

①起業家がなまけていた

②投資家に納得のいく業績説明をしていなかった

 

そして失敗から立ち直る方法が次の二つ。

必要なのは「誠実な説明」、取り戻すのは「信用」だ。p63

 

失敗から再起できるか、できないか。それは、結局のところ、失敗した人の人間性とその後の行動にかかってくるのである。p65 

 

【感想】

上には第一章と第二章を取り上げました。

本書はこれから第三章からグローバルビジネスの最前線で活躍する日本人エリートがいかに失敗体験から学び、自らの成長へ生かしてきたかが紹介されています。

なかでも個人的に付箋を多く貼ったのが、「グーグルの失敗力」。

グーグルの方針とアップルの方針が対極にあり、それが「なにをもって失敗とするか」にまで繋がっているのが興味深かったです。

 

ただこうしてエリートの失敗談を並べられると、企業家の成功談や武勇伝を聞かされているのと同じ雰囲気を感じるのはなぜなのでしょう。

ハーバードの章で、失敗には共感でき、多くを学べるとありますが、いまの自分には成功体験と同様、雲の上の話のように思えるところも多々ありました。

少しエリートの失敗談から自分にも生かせるところを抽出して身近なレベルまで落とし込む一手間が必要かなと。