【アマゾンの紹介】
(略)今までのような「マス広告一辺倒の時代」は終焉した。
もはや大声で叫ぶだけでは、賢くなった消費者は振り向いてはくれないのだ。
では、これから必要になるのは何か?
それは、必要に応じてメディアを使い分けながら、戦略PRと広告を
トータルにデザインして消費者にアプローチしてブームをつくっていくという発想なのだ。
本書はその具体的手法を、対マスコミはもちろん、ますます重要度の高まるウェブ媒体、
あるいは書籍を使ったPRなど様々に紹介していく。
ブームを作り出すための「新しいルール」がわかる!
【目次】
第1章 なぜ、マス広告は効かなくなったのか
第2章 「戦略PR」の時代
第3章 チャネル別・PR手法成功の秘訣
第4章 「書籍」を用いたPR手法
第5章 PRの発想で自社メディアを展開する
【ポイント】
◆1 大転換期のマスマーケティング、鍵は「世論作り」=戦略PR
ここ数年で、消費者は様変わりしてしまった。
世界的大不況が言われているなかで、このような大変化は不安を誘うかもしれない。ましてやあなたが、自社の商品やサービスを売りたいと考えているなら、絶望的な気分になってしまうかもしれない。
しかし、そんな心配はせず、これは、千載一遇のチャンスなのだと気づいてほしい。
今、消費者はマス広告など、「広告臭がするもの」だけでは簡単には動かない。膨大な情報を受けるなかで、疑い深く、なかなか信じてくれなくなったのである。では、消費者はどうしたら、あなたの売りたい商品やサービスに関心を持ってくれるのか。それには、その商品やサービスが必要とされる「世論づくり」が重要なのだ。
世論は広告ではつくれない。それを可能にするのが、中立的な第三者を動かす「戦略PR」である。p5
◆2 広告とPRの違い。
一言で言ってしまえば、広告は「バイ・ミー」であり、PRは「ラブ・ミー」だということ。p52
○情報発信のしかたの違い
広告は、買い取った広告枠のなかで発信する。
PRは、お金で枠を買うことをしない。媒体に有益な情報を提供し、それを取り上げてもらう形をとる。
反面、
広告は、倫理的に問題が無ければ、何でも発信できる。
PRは、アウトプットの形は、媒体の情報発信者にゆだねられる。
○発信対象
広告は、それを望んでいない人にも一方的に与えられる。
PRは、視聴者が見たいと思っている番組、読者が読みたいと思っている記事なので、必然的に注目度も高くなる。
○PRの欠点、広告の長所
PRが第三者による客観情報の発信となるために、タイミングや露出量、露出内容がコントロールできない。
広告は媒体、タイミング、露出量をあらかじめ設計できる。
◆3 戦略PRとは何か。
多くの人たちが暗黙のうちに共有している情報や集合意識を、さまざまなメディア露出を通して戦略的につくり出していく。その世論の流れに乗って、商品やサービスの売上につなげる―こうした一連の戦略シナリオを設計し、さまざまなチャネルで実行するのが「戦略PR」だ。
戦略プランナーの本田哲也氏は、書籍『戦略PR』のなかで、「消費者を「買いたい気分」にさせる「空気」。それをつくり出すのが『戦略PR』」と定義している。「空気をつくる」というキーワードは、戦略PRの代名詞として広く使われるようになっている。p56
◆4 戦略PR手法4つ
戦略①商品・サービスをトレンドに乗せて広める
提供する商品やサービスの購入動機につながる話題やトレンド、価値観を探し出し、そうした世論を商品購入に戦略的に活用していく。p79
本書には、具体例として熊野古道での熊野セラピーが取り上げられています。
戦略②商品・サービスの「情緒価値」を広める
機能価値がもたらす感情・情緒の価値=「情緒価値に」着目する。
情緒価値をわかりやすく言い換えると、「その商品を使うとどんないい気持ちになるか」ということだ。
具体例としてキットカットの戦略PR。
要約すると、
味わいが機能価値になるが差別化が難しい。
だから味わいがもたらす情緒価値に注目する。
○2001年当時のコピー「ちょっとブレイクしない?」はメインターゲットの高校生の共感をえていなかった。
○メインターゲットの高校生の本音を調査すると、みな受験や恋愛、人間関係などさまざまなストレスを抱えていることが分かった。
○キットカットのブランドのコンセプトを「高校生をそっと応援し勇気づけるブランド」と再定義する。
○訴求方法を検討していたとき、福岡弁で「きっと勝つ」を「きっとかつとお」と発音すると耳にする。
○まずサンプリングから入る。「KITサクラサク」と印刷されたポストカードとキットカットを添えたものを受験生が宿泊しているホテルのスタッフから受験生に手渡してもらう。
○こうした活動により口コミが広まり、受験生のお守りの定番となっていき、新聞やテレビで取り上げられるようになる。p85
戦略③ 商品・サービスが解決できる「問題」を広める
その商品によって解決すべき問題を先に世の中に広めておくというのが効果的。(イシューブランディング)
具体例、「三年目問題」p88
戦略④ 見えないサービスを「見える化」する
宣伝するのはむずかしいといわれる見えないサービスもPRできる。
ポイントは4つ
1 サービスをパッケージ化する
2 サービス内容を「伝える場」をつくる
3 サービスの「受け手」に語らせる
4 従事している「人」を売り出すp91
◆5 戦略PRの効果検証。「メディア露出」だけでは終わらせない
PRの効果検証は広告換算額で検証するのが一般的だったが
戦略PRではさらに、ターゲットがどの程度期待する行動をとったかを重視する。
一番わかりやすいのは売上高だが、
ほかにもたとえば、
問い合わせ数や会員数、
ホームページへの検索が固有名詞で増えたかどうかなど(マスコミ露出の最大のメリットは商品名などの信頼性や好感度が高まることでその商品目当てのアクセスが増えること)
【感想】
最近のマイブームであるPHPビジネス新書から。
マーケティングに興味があったので。
「戦略PR」という言葉自体初めてでした。広告も時代が変わっているんですね。
教育関係の仕事に就いていたので、とくに上に取り上げた「キットカット」戦略は、すぐ身近にありました。いつのまにか試験の前日にはキットカットを贈る習慣になっていたのを思い出します。裏側にこんな戦略があったとは。
他にも気になった点がいくつか、
・対マスコミPR・アプローチの極意
・対ウェブPRのアプローチなど、媒体への働きかけの方法論
などは、「空気をつくる」協力者としての媒体相手のアプローチの仕方から載っていますし、
第4章「書籍」をもちいたPR手法にも
・成長企業は本でつくる
・知っておくべき出版マーケットの仕組み
・通る企画の立て方
その業界で第一人者になったから本を出すというのではなく、本を出すことによって、その業界のトップを狙うという考えが大事なのだ。p166
と企画段階のレベルから手ほどきが。
とはいえ、自社製品にそこまでPRに乗せられるほどの話題性は無いと思ってるビジネスマンも多いかもしれませんが、そんな方々に対しても、
図を交えながら、「ニュースは「つくる」ものである」ことが丁寧に説かれてます。
従来一般の広告手法での行き詰まりを感じている広報の方々におすすめの一冊です。