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【心と体はつながっている】『脳を鍛えるには運動しかない』ジョンJ・レイティ

 

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

 

 【アマゾンの紹介】

人間の脳は走りながら進化した。
脳と気持ちが劇的に変わる脳科学からの運動指南。
空前の脳ブームとランニング・ブームを結ぶ待望の書! 

【目次】

第一章 革命へようこそ―運動と脳に関するケーススタディ

第二章 学習―脳細胞を鍛えよう

第三章 ストレス―最大の障害

第四章 不安―パニックを避ける

第五章 うつ―気分をよくする

第六章 注意欠陥障害―注意散漫から脱け出す

第七章 依存症―セルフコントロールのしくみを再生する

第八章 ホルモンの変化―女性の脳に及ぼす影響

第九章 加齢―賢く老いる

第十章 鍛錬―脳を作る

タイトルはやや誇張。「しかない」という意味は原題には含まれてない。

原題は『SPARK The Revoluionary New Science of Exercise and the Brain』 

ただ良書。とくに運動が心体にいいことはわかってるけど、どういいか理屈を知りたい人には。

あるいは目次にある「ストレス」や「不安」、「依存症」「うつ」などに悩まされている人には。

「訳者あとがき」に引かれた編集者の言葉にあるようにこの本で救われる人は少なくないはず。

著者の目指すところは、

 現代の文化は心と体を別のもののように扱っているが、わたしはそれをふたたび結び付けたいと思っている。no136

 

運動と脳をつなぐ驚きに満ちた科学をわかりやすい言葉で語り、それが人間の生活にどのような形で現れるかを示すことだ。そして、運動が認知能力と心の健康に強い影響力をもっているという認識を確かなものにしたい。運動は、ほとんどの精神の問題にとって最高の治療法なのだ。no218

 

運動が脳のはたらきをどれほど向上させるかを多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れるようになることだ。

もっとも、それを義務だとは思ってほしくはない。運動はもちろんすべきなのだが、無理強いするつもりはない。(おそらく、そんなことをしても無駄だ。ラットの実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果が出ないことがわかっている)。no191

 

 わたしが望むのは、本書で述べてきたことすべてがあなたを勇気づけ、あなたがテレビのリモコンのかわりにジム用のバッグを握り、スポーツを観戦する側ではなくフィールドに立つ側になってくれることだ。あなたは遺伝子も感情も、体も脳もすべて、活動的な生活を渇望している、わたしたちは動くようにうまれついているのだ。動いているとき、あなたの人生は燃え始める。

 

これらの目的をかなえるため、著者は脳と体を結びつけていることを証明する実例を挙げていきます。

とくにネーパーヴィル・セントラル高校の体育の授業で起きた「革命」は教育と運動をむすびつけます。

 

【ポイント】

 ◆1 授業前に運動することで、成績があがった

シカゴの西にあるネーパーヴィル・セントラル高校では午前七時一〇分から体育の授業が始まる。教育実験の最新の取り組み「0時限体育」。

生徒たちは、最大心拍数の80~90%で運動するように指示され、めいめい腕時計式の心拍計を装着し、トラックに出て走り始めるそう。

これは、「新しい体育」の基本原則「能力よりも努力で評価される」の努力を測定するため。

 

この取り組みの結果、学校が生徒ひとりにかける費用(教育関係者はそれが成績を大きく左右すると見ている)が他の優秀な公立高校よりかなり低いにもかかわらず、

TIMSSの理科のテストでネーパーヴィルは一位になった。(わずかの差でシンガポール、つまり世界一位)数学では同校は六位(その上にいるのはシンガポール、韓国、台湾、香港、日本)。 

この取り組みは国中の注目を集め、体育の授業のモデルタイプとなっているそう。

 

 ◆2 運動が学習のメカニズムを細胞レベルで強化する

ではなぜ「0時限体育」が成績をあげたのでしょう。

運動は三つのレベルで学習を助けているといいます。

①まず、気持ちがよくなり、頭がしっかりし、注意力が高まり、やる気が出てくる。

②つぎに、新しい情報を記録する細胞レベルでの基盤としてニューロンどうしのむ結びつきを準備し、促進する。

③そして三つ目に、海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す。no1045

メッセンジャー役のグルタミン酸ガンマアミノ酪酸(GABA)や、活動調整のセロトニンノルアドレナリンドーパミンや脳由来神経栄養物資BDMFのメカニズムについては本書に譲りますが、文系の私にもわかりやすく本書には説明があります。

 

 

運動することでこれらの物質が活発になりニューロンを生み出したり、記憶を強化するように脳が設計されている事実は、人類の生活を振り返って見れば当然のもののようです。

 ◆3 運動しないことは人間本来の性質を壊し、種の存続を脅かしている

 人類は過去五十万年にわたって、絶えず変化する環境に適応するために、身体能力を磨き、思考する脳を進化させてきた。ともすればわたしたちは狩猟生活をしていた祖先を、もっぱら体力に頼って生きていた野蛮な人間と見なしがちだが、彼らにしても長く生き延びるには、知恵をはたらかせて食物を見つけ、蓄えなければならなかった。人類の脳の回路には、食物と体の活動と学習とのつながりがもともと組み込まれているのだ

しかし、わたしたちはもはや狩りも採集もしていない。そこに問題がある。

(中略)

もっと気がかりで、しかも、ほとんどだれも気づいていないのは、動かない生活は脳も殺してしまうということだ。実際に脳は縮んでいくのである。 

 

学習と記憶の能力は、祖先たちが食料を見つけるときに頼った運動機能とともに進化したので、脳にしてみれば、体が動かないのであれば、学習する必要はまったくないのだ。no1045

 

運動は現代の病とも関連があるようです。

 ◆4 運動でストレスに強くなる

生物学的には、ストレスは体の均衡を脅かすものすべて指すそう。

脳でいえば、ニューロンの活動を引き起こすものはなんでもストレスとなる。だから運動も実はストレスの一種。けれど運動はストレスで終わらない。

実は、運動によって引き起こされた脳の活動は、分子サイズの副産物を生み出し、それがニューロンを傷つけるが、通常は修復システムがはたらいてニューロンはむしろ強くなり、今後の問題に対処できるようになるのだ。no1187

ほかのストレス源と運動との大きな違いをもう一つ。

運動は自発的にすることなので、そのストレスは予測できるし、コントロールできる。その点が心理上、重要な意味をもっている。自分を支配しているという感覚と自信が得られるからだ。

この一節で、自尊心の高低も、ストレス耐性の閾値から説明できることも納得です。

「体育会系」とよばれる方々の自信の在り処はこのあたりですね。

ちなみに孤独いわゆる「ぼっち」は脳にとってよくないそうで。

ラットに生理的ストレス反応を引き起こすためによく用いられる方法は、グループから引き離すというものだ。ただ隔離するだけでストレスホルモンは活性化する。同じことは人間にも言える。締め出されたり孤立したりするとストレスが溜まる。孤独は生存を脅かすからだ。

 

 

運動の効用はまだまだ続きます。

 

◆5 運動と注意力は同じ回路

とくに興味を惹かれるのは、運動と注意力の強い結びつきだ。この二つは、脳内で同じ回路を共有していて、おそらくそれゆえに、武術のような活動はADHDの子どもに効果があるのだろう。新しい動きを覚えるために、彼らは集中しなければならず、その際、運動システムと注意システムの両方が動因され鍛えられる。

 

◆6 運動で依存症は治療が容易になる

多くの人が、依存症にとって本当の問題は、やる気のなさだと考えている。ある意味でそれは正しい。だが、やる気とは脳の信号によって生まれるものであり、その信号は、確実なメッセンジャー(伝達物質)と、健全な神経回路がなければ送れないことに気づいている人は少ない。(中略)

簡単に治すことはできないが、運動を用途の広い道具として利用すれば、治療ははるかに容易になる。

 

◆7 どんな運動をすればよいか

では、最後にどんな運動をすればよいか。

実はどれくらいの量こなせば脳に良いかは、30分のジョギングを週に2,3回としている研究もあれば、週に5回以上となっていたりと諸説あるようで判然としません。

ただメニューについては以下のように書いてありました。

有酸素運動と複雑な動きはそれぞれ別の有益な効果を脳にもたらすのだ。

 

有酸素運動神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにする.no1085

どちらか片方するより組み合わせるほうが有益なんですね。