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【批判的読書法とは】苅谷剛彦著『知的複眼思考法』を読んで。巻末思考術リーディングブック+オススメ3選。

【はじめに】

本日ご紹介したいのは、思考法の1冊には必ずと言っていいほど取り上げられる有名タイトル『知的複眼思考法』(苅谷剛彦)。 

 

もしあなたが、「自分で考えろ」と言われて途方に暮れたことがあるならこの本が役に立つことは間違いない。

 

あるいは、そんなふうに責め立てられたことは無いが、なんとなく何かを決めるときに周りの人間や空気に流されてしまっていると感じるのならこの本をオススメします。

 

自分の思考力、判断力を取り戻すために、この本は有力で、とても頼もしい。

 

「自分で考えろ」というのはやさしい。「自分で考える力を身につけよう」というだけなら、誰にでもいえる。そういって考える力がつくと思っている人々は、どれだけ考える力を持っているのか。考えるとはどういうことかを知っているのか。本を読みさえすれば、考えることにつながるわけでもない。自分で何かを調べさえすれば、考える力が育つわけでもない。ディスカッションやディベートの機会を作れば、自分の考えを伝えられるようになるわけでもない。

では一体何をすればよいのか。

複数のアプローチが紹介されるが、その前に、まずはタイトルから解説される。

本日の1冊

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ:苅谷剛彦 

苅谷剛彦 - Wikipedia

 

タイトル「知的複眼思考法」とは

「複眼思考」とは、複数の視点を自由に行き来することで、ひとつの視点にとらわれない相対化の思考法といってもよいでしょう(中略)「情報化の時代」とか「IT革命」といった決まり文句の発想に流されることなく、その事態を自分自身との関わりの中で捉え直す複数の視点を持つこと。そこから自分なりの考える力をはたらかせていく方法を「知的複眼思考」と呼ぶのです。

ポイントは2つ

  • 事態を相対化し、複数の視点をもつこと
  • 自分なりの考える力を働かせて思考すること

この対極にあるのが、「正解信仰」。つまりあらゆる問題には、「すべてを説明してくれる大正解」がどこかにあるという態度です。

 

なぜなら唯一の正解がありえるのは、単独の視点から物事を捉えることでしか成立せず、ものごとには多様な側面があることを拒絶してしまっているからです。

 

また、「正しい答え」があるとする態度は、その答えにたどり着くまでのプロセスを「無駄な」ものとして排除してしまうことになります。

そこでは与えられた情報から「自分で考えることは」余分であり、「設問」に対して「唯一絶対の答え」を「反射神経」によって返答することこそが価値となるからです。

 

さて仮想敵がはっきりした今、次の文章により、この本の目的と位置づけを、著者は大胆に宣言します。

知識や情報の獲得方法について書かれた本はたくさんあります。勉強法のすぐれた解説書もあります。発想法や着想法のハウツーも数多く出版されています。ところが、自分なりの問題を立てるにはどうすればよいのか。立てた問題をどのように展開していけば、それまで隠れていた、新しい問題の発見につながるのか。そして、何よりも、どうすれば、ステレオタイプにとらわれない「自分の頭で考える」視点を得ることができるのか。自分で考えるためのこうした方法を、わかりやすく解説したテキストは、まだあまりないようです。「知」に関連した本がたくさん出版されている割には、本章の冒頭にあげたような読者の要望に応える本も、少ないようです。本書はその間隙を埋めるために、できるかぎり具体的な説明を通して、皆さんを「知的複眼思考法」に招待するガイドブックなのです。

構成

この本の構成は以下です。

  1. 第1章:本の読み方を通して考えるための基礎力を養成をします。「批判的な視点から本を読む」ことで自分で考えるための視点を得る方法を掴みます
  2. 第2章:文章を書くことを通じて、自分の考え方を論理的に表現する方法を学びます。1章とあわせて「複眼思考の基礎トレーニング」にあたります。
  3. 第3章:問いの立て方と展開のしかたをまなぶ、いわば複眼思考の実践編となります。
  4. 第4章:複眼思考の「中心部分」の説明となります。ものごとの二面性や多面性に目を向けるための方法、ものごとの逆説的な関係に注目するための方法、メタ的な視点を得る方法を得るための方法論が語られます。

当エントリーでは、このうちの第1章を取り扱います。当ブログが読書をメインとするブログであり、このブログの読者にとって「本の読み方」への考察は得るところが大きいと思うからです。

第1章:創造的読書で思考力を鍛える

ステップ1:読書の効用

ある一つの問いかけから、この示唆に富む章は始まります。

 

世間が「若者が読書をしなくなった」という言説には、読書をしないことで失われた「何か」大切なものがあるという「前提」があります。

では、この手垢のついた「本を読まなくなった」という指摘を通じて、世間が「読書」でしか得られないと思っているものは何なんでしょうか?

 

 

出版界の延命策という身も蓋もない答えはここでは棄却されます。

 

もし、それが何も無い、他のもので代用できるものであれば、本など読む必要はなくなるはずです。

 

 

著者の考えはこうです。

たとえば「知識」「情報」「教養」「楽しみ」「興奮」「感動」はどうでしょうか。本だけでしか得られないものは、残念ながらどうやら見当たりません。

大方の人が想像するであろうこれらの候補は、すでに代替メディアのほうが手軽に、早く得られると言えます。

 

では残るのは何か。

それでも本でなければ得られないものは何か。それは、知識の獲得の過程を通じて、じっくり考える機会を得ることにある_つまり、考える力を養うための情報や知識との格闘をの時間を与えてくれるということだと私は思います。

 

ステップ2:著者と対等な立場に立つ

次に問われるのは、読書をする際の著者との関係性です。

 

「あなたは本を読むとき、著者とどんな関係にありますか。」

ここで勧められるのは「著者との対等な関係」です。

 

 

ここでは割愛しますが、本文ではその「関係性」が説明される前段階として「1文」実際に書く課題が挟まれます。

その狙いは、「書くプロセス」に含まれる書く人の「迷い」や「選択」を知ることです。

 

ただの受け手としてでいるだけでは得られない、あるいは忘れている「産みの苦しみ」ともいうべき方眼紙を前にした「苦しみや葛藤」を今一度思いだすために課題はありました。

 

 

結果として、私たちは、

読書する文章を、「完成品」として「文章をなぞるようによむのではない」「ほかの文章になる可能性のあったもの」として捉え直すことを思い出し、書物を「出来上がって動かない完成品」として受け取ることを逃れられるようになります。

 

 

著者という一人の人間が、「さまざまな可能性」の中から紡ぎ出した一文として目の前の文章と対峙するのです。

その態度は、「私ならこう書いたかもしれない」や「著者はこう書くこともできたのではないか」を考えながら文章を読むことを可能にします。

 

 

こうして、書きあがったものを受け取るだけの読書から、次に何が書かれる可能性があったのかを探りながら進める読書、時には素直に著者の論理に感心し、時には少し首を傾げ立ち止まり、時には批判的になることもある読書へと、全く違った読書体験へと変貌させることに成功します。

 

では、こうした「批判的な読書」をものした私たちは、具体的にどのような視点を、本を読み進めながら持つことになるのでしょうか。

 

 

本文では、「批判的読書のコツ20」があげられます。

「批判的」読書のコツ20

  1. 読んだことのすべてをそのまま信じたりしない
  2. 意味不明なことには疑問を感じる。意味が通じた場合でも疑問に感じるところを見つける。
  3. 何か抜けているとか、欠けているなと思ったところに出会ったら、繰り返し読み直す。
  4. 文章を解釈する場合には、文脈によく照らす。
  5. 本について評価を下す前に、それがどんな種類の本かをよく考える。
  6. 著者が誰に向かって書いているのかを考える。
  7. 著者がどうしてそんなことを書こうと思ったのか、その目的が何かを考える。
  8. 著者がその目的を十分果たすことができたかどうかを知ろうとする。
  9. 書かれている内容自体に自分が影響されたのか、それとも著者の書くスタイルに強く影響を受けているのかを見分ける。
  10. 議論、論争の部分を分析する。
  11. 論争が含まれる場合、反対意見が著者によって完全に否定されているのかどうかを知る。
  12. 根拠が薄く支持されない意見や主張がないかを見極める。
  13. ありそうなこと(可能性)にもとづいて論を進めているのか、必ず起きるという保証付きの論拠(必然)にもとづいて論を勧めているのかを区別する。
  14. 矛盾した情報や一貫していないところがないかを見分ける。
  15. 当てになりそうもない理屈にもとづく議論は割り引いて受け取る。
  16. 意見や主張と事実との区別、主観的な記述と客観的な記述との区別をする。
  17. 使われているデータをそのまま簡単に信じないようにする。
  18. メタファーや、熟語や術語、口語表現、流行語・俗語などの利用のしかたに目を向け、理解につとめる。
  19. 使われていることばの言外の意味について目を配り、著者が本当に言っていることと、いってはいないが、ある印象を与えていることを区別する。
  20. 書いていることがらのうちに暗黙のうちに入り込んでいる前提が何かを知る。

 

上記20のコツが具体的にすぎる場合には、次の要約された「重要な」批判的読書のポイント4点が意識しやすいかもしれません。

ポイント1:読んだことをそのまま鵜呑みにしない(コツ1〜4)

ポイント2:著者の狙いを理解する(コツ5〜9)

ポイント3:著者の論理を丹念に追う(コツ10〜18)

ポイント4:著者の前提を探り、疑ってかかる(コツ19〜20)

 

こうして重要なポイントを学んだ後、本文ではいくつかの練習問題をこなすことになります。

 

習得しつつある「批判的読書」の仕方を、著者の手際を実際に見ることによって、とくに、チェックポイントを当てはめながら、批判的な視点を得る手順が、一層私たちの理解を深めることに成功するでしょう。

 

こうして私たちは「批判的読書」の仕方を学びました。「読書の効用」として私たちが考えているのは、「有益な情報を得る」ことがせいぜいでした。それが今では、読書を依り代に、著者の思考や推論を理解したり、疑ったり批判することで著者と同じ立場にたちながら、自分自身から生まれる新たな思考を展開するメディア体験へと変化させることができるようになったのです。

つづく2章では、論理的な「書き方」を学ぶことで、「批判的な議論」を展開し思考を厳密にし、「批判的読書」からさらに「代案を出す」ところまで思考を進めます。3章では「疑問」を感じるところから「問い」をたて自分でその解答を探し出す方法論を学ぶことになります。

 

さて、著者は第一章の最後に、さらに思考力を養成する読書法を4つ紹介しています。

「思考力養成読書法」4種

  1. 論争を読む:利点は、すぐれた論者たちの批判の仕方を実例をもって学べること。
  2. 先を読む読書:詰め将棋ならぬ「詰め読書」。次に著者がどんな議論を展開するのかを予想してみる読書。
  3. 古い文章の活用:出版されてしばらく経った本を読み直し、著者の推論を、書かれた頃からすると未来である今から検証する読書。
  4. 書評のすすめ:本のエッセンスをとらえたうえで、読んでない人にわかりやすく説明し、さらに読み手の問題意識に引きつけて、批判やコメントをする演習としての書評。

巻末には、著者のリーディングガイドブックが掲出されています。

リーディング(推薦図書)ガイドブック

さらに自分で考える力を身につけたい人のために

ヘーゲル・大人のなりかた:西 研 NHK出版

哲学のモノサシ:西 研

大学で学ぶことの意味を考えたい人のために

大学でいかに学ぶか:増田四郎

大学で何を学ぶか:加藤 諦三

複数の視点に立って常識を疑う力をつけたい人のために

パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集:エーリッヒ・ショイルマン

神話作用:ロラン・バルト

悪循環の現象学―「行為の意図せざる結果」をめぐって:長谷 正人

創造の方法学:高根正昭

知的複眼思考実践編(著者自身による複眼思考実践本)

大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史:苅谷剛彦

教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか:苅谷剛彦

おまけ:Kindlized的「思考本」3選

自分のアタマで考えよう――知識にだまされない思考の技術:ちきりん

新版 問題解決プロフェッショナル:齋藤 嘉則

問題解決大全:読書猿

【あとがき】

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