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あなたは今の仕事を天職だと思えますか?
AKB48を生みだした秋元康と、「SMAP×SMAP」など数々のヒット番組をつくり出した鈴木おさむの2人が、「仕事=天職」について存分に語り尽くします。
入院した際には病室でうち合わせをして乗り切った、借金の苦労も面白く話してネタにした、ひょんなことからちゃんこ屋を開いた、など奇想天外な仕事話も満載。
人気放送作家としてリスペクトし合う2人だからこそ、仕事に対する本音や仕事中の秘話もすべて徹底的に語り尽くしました。
「好きなことがわからない」「やりたいことが見つからない」「いまの仕事をこのまま続けていいのかどうか」……、仕事に悩めるすべての人に送る、究極の仕事哲学本です。
【目次】
第1章 九八%は「運」で決まる
第2章 「好奇心」を育てる
第3章 「汗」をかくしかない
第4章 「才能」は誰にでもある
第5章 「夢はかなう」は本当か?
第6章 「天職」との出会い方
【ポイント】
◆1 九八%は「運」
秋元:僕は成功は九八%は運で、あとは一%の汗と一%の才能だと思ってる。汗も才能もなければ100%にならないから絶対必要なんだけど、九八%は運。
なぜなら、すごく才能があるな、すごく努力しているなっていうタレントやクリエイターをたくさん見ているけど、必ずしも売れないよね。お笑いの世界でもそう。それはなぜかというと、運なんだよね。p16
冒頭から、成功の主成分は「運」と言い切る二人の対談。
では、その運をどうやってつかむのか?どこに運はあるのか?
鈴木:この仕事を始めて、橘いずみさんのラジオをやったときのことなんですけど、当時下っ端の作家だったんですね。そのときに、レコード会社の岡本さんっていうおもしろいおっさんがいて、「次の飲み会に辺見マリの写真集買ってきてよ」って言われたんですよ。辺見マリさんのヌード写真集が出て話題になった時期で。「辺見マリの写真集ですかあ」とかって言いながらも買っていくつもりだったんですけど、これがまた小忙しくて、まあいいだろうって買っていかなかったんです。そうしたら、その岡本さんじゃなくて、番組のディレクターが、裏で僕のことをバッキバキに怒ったんですよ。そんなに怒られたことないっていうぐらいに怒られて、「お前、クソだな」って、「お前、岡本さんが本当に辺見マリの写真集を見たがってると思ってんのか」って。「お前が持ってきたら、それをお前がみんなにプレゼンできるだろ。お前のことなんか誰も興味ないんだから、お前にそのチャンスをくれようとしてるのに、なんでそれに気づかないんだよ」って。はっ!って思って。よくチャンスのかたちって言いますけど、まさか辺見マリの写真集が、チャンスのかたちだと思わないわけですよ。子どもだから。そのときに気づきました。チャンスのかたちってわからないなって、本当に。
秋元:ここに、運があって、反対側に夢があったときに、この二つを結ぶものがないように見えるよね。だけど目の前の小さな運をたどっていくと、夢のほうにいく場合がある。あるいは夢にはつながらないかもしれないけど、運をたどっていったその先に別の幸せがあるかもしれない。だけど、ほとんどの人が運の方には行かないんだ。(略)
秋元:誘われたときに多くの人は、それを運だと思わなくて、反対側に、たとえば、就職試験が控えてるとなると、そっちに行くことを選んでしまう。でも、誘いにのってみると、就職試験なんか止めてこっちの世界にいこうってなるかもしれないじゃない。でもみんな、そのときの運の流れ、空気の流れよりも、先に決めたスケジュール通りに生きようとしちゃうんだよね。p49
◆2 運を手にするためのたった一つの方法
鈴木:運の種って、好奇心だと思うんですよね。
秋元:そうだね。自分が「おもしろそうだな」と思えるかどうかがいちばんだね。
(中略)
秋元:そう、何かを始めるとき、必ずそこに「ひょんなことから」が入ってるわけ。「ひょんなことから」ほど強いものはない。運命が選んでいるから。自分の人生を振り返っても、成功したことも失敗したことも「ひょんなことから」だよね。AKB48を作ったのも「ひょんなことから」。おすし屋さんで食事をしていたときに、「こんなことやったらおもしろくない?」って言ったら、「それやりましょうよ」と言われたのがきっかけ。
ジェロの「海雪」を書いたのだって、戸田恵子さんのアルバムのプロデュースをしていたら、そのディレクターに「おもしろい新人がいるんですけど詞を書いてくれませんか」って言われて。うちのスタッフは「スケジュールがいっぱいで時間がまったくとれないから無理です」って言ったんだけど、僕が、なんかおもしろそうじゃんって、引き受けちゃったんだよね。とんねるずだった、おニャン子クラブだって、なんだって「ひょんなことから」なんだよね。p58
そして話はタイトルの「天職」に移っていく。
秋元:天職に就いてるなって思える人はみんな、好きだからやってる。好きかどうかでまずふるいにかけられる。だから、おさむもそうだし、成功した人はみんなそうなんだけど、苦労時代の話を聞かれるでしょ、でもほとんどの人が苦労だと思ってないんだよね。それはそれでおもしろかったなと思ってるから。でもまわりは、「その頃は大変でしたね」と思うんだよ。
AKB48も、「秋元さん、よくがんばりましたね」とかって言われるんだけど、僕は逆にそこではたと気づくの。あんなものやり始めちゃって、売れなくて、大変だっていうふうに見られてたのかと。でも本人はぜんぜんそんなふうに思ってない。これやったらどうなるんだろうなとか、こんな歌出したらどうなるんだろうとか。すごく楽しかったわけだから。p64
◆3 時代が振り向かないと意味がない
鈴木:おととし、僕がすごくかわいがっていた芸人がが辞めたんですよ。高校の後輩でもあるんですけど、腕があって、ブレイク寸前と言われていたんですよね。芸人仲間からも舞台でのおもしろさは認められていました。僕も止めたし、みんなも止めたにもかかわらず、最終的に辞めると決めた。
彼が言ったのは、「もともと芸人になろうと夢見たのは、明石家さんま、とんねるず、ダウンタウン、になりたかったからだ」と。芸人はみんな、日本でいちばんおもしろいと言われたいと思って芸人になっている。そこで、自分で順番をつけてみたらしいんですよ。おもしろい順。そうしたら自分は1000位にも入らない、と。自分よりおもしろいと思う芸人が1000人以上いたって言うんです。「自分は必ず売れるという自信がゆらいだ。仮にちょっと売れたとしても、二番手、三番手でもすごいけど、50位、60位までも行けないかもしれない。半端な位置で満足するのは何か違うんじゃないか。芸人を続けるために芸人をやるっていうのは何かおかしいんじゃないか。だから僕は辞めます」と。(中略)
彼がもともと持っていた夢をかなえられなかったのは、もしかしたら才能がなかったのかもしれない。(中略)でも、なんていうか、自分の夢のレベルを見極められることも、僕は才能であり、天職につながる道なんじゃないかなどと思っていて。
秋元:だからやっぱり、才能よりも運が勝ると僕は思うんだよね。その芸人を引退した彼がすごい技術を持ってても、時代が振り向いてくれないと意味がない。p186
◆4 「やりたいことがない」は自分で「種」を消してしまっている状態
秋元:一般の人はどうやって天職を見つけていけばいいんだろう。
鈴木:最近、「今の二〇代の子はやりたいことがない」ってよく言われるじゃないですか。
秋元:うん。
鈴木:そのことについてはどう思いますか?本当にそうなんでしょうか。僕は、やりたいことがないって言うけど、何か「種」はあると思うんです。
秋元:そうだね。
鈴木:やりたいことの「種」はあるのに、自分で消してしまっている。もちろん、僕らが育ってきた環境より、日本は不景気だし、大変な状況にはなっているけど、だからこそ「種」は絶対にあるんじゃないかと思うんですけどね。
秋元:まさにそうだと思う。「種」はあるんだけど、それに水をあげて、養分を与えても、無理だろうなって思ってしまうんじゃないかな。そうするとその「種」を見ないようにしてしまう。だから「やりたいことがない」になっちゃう。たとえば、「君かわいいから女優になれるよ、ならない?」って言ったらたぶん「女優やりたい」ってなるじゃない。あるいは、「作詞家にならない?」って言ったら、「やりたい」って言うと思うよ。
でも、すべてのものの中からそれを選択するほど、信じていないんだと思う。未来を。p207
鈴木:でもやっぱり、僕にとって何がいちばんのラッキーだったかって考えたら、放送作家になりたいという気持ちが中学生という早い時期に出たってことですね。
秋元:「種」を見つけたってことだね。
鈴木:放送作家っておもしろいなって思えたことが、いちばんの自分の「運」ですね。p212
秋元:「天職」といかに出会うかということを考えると、やっぱり、自分の「本当の声」を聞けるかどうかなんだよね。当たり前のことのようだけど、これがなかなか難しい。(中略)
秋元:たとえば、わかりやすいことで言えば、雑誌のインタビューで好きな映画を聞かれたときに、これを答えたら恥ずかしいなとか、何が好きって言おうかなって思うでしょ。
鈴木:これを言ったほうが格好いいと思われるだろうな、ってのもありますよね。
秋元:それは「記号」だよね。その映画を見て本当におもしろいと思ったのか。その本当の気持ちにどれだけ素直になれているかっていうのが、「天職」かどうかのいちばん大事なポイントだよね。でもみんな「記号」のほうを大切にする。p230
【感想】
稀代のヒットメーカーお二人の「天職」をめぐる対談。
ただタイトルに惹かれて「天職の探し方」がばっちり書いてあると思って手に取ると、なかなか残念なことになる。
それよりお二人の仕事内容や仕事観。AKBにたいして考えていたこと、仕事をした芸人たちの悲喜こもごもなどに興味を持っているなら満足できるはず。
自分は前者だったもので、そこまで感銘をうけた箇所は少なかったかなあと。まあ目的がずれてたってことですね。
さいごに秋元康の「まえがき」から
読者のみなさんは、今、“天職”に就いてますか?
「いや、“天職”とは言えない」と思う人もいるでしょう?
でも、辞めないということが、“天職”の条件です。
10年後、20年後、30年後、…毎日が楽しく過ごせていたとしたら、
もしかしたら、その職業が天職なのでは?